§ 紅茶の茶柱 §
2005.1.31
 皆さんは今年、おみくじを引きましたか?私も元旦の初売りを終え、二日の早朝、近くの神社に出向き、初詣の恒例として引いてきました。結果は『中吉』。『凶』を引いたわけではないのですが、その内容には「旅行=控えなさい。」という一語に「アラアラ・・・・・」とがっかり。その部分だけハッキリ記憶に残っている。というのも、この夏、五年ぶりにイギリス紅茶研修を計画していたからだ。イギリスと言えば、正に世界の紅茶消費大国。その歴史や文化は三百年にも及ぶ。現地でマナーや新しいティーフード、現在の紅茶事情を実際に体験する。それに由緒ある建築物を見学し、お店作りに役立たせるのが目的だったのだが・・・・・。
(こんな思いをするなら、おみくじなんて引かなければいいんだ、と思わずつぶやいてしまった。)
 そんな気分で正月を過ごし、日々ティーメイクに明け暮れていたのだが、ある日ティーサロンから、一人のお客様が「オー茶柱がタッテルー」「紅茶で茶柱が立つなんて初めでだなぁ〜」と叫ぶような声を上げた。反射的にテーブルの上に置かれたカップを厨房からは、見えないと分かりつつ、見つめてしまった。それからというものそのお客様のテンションは上がりっぱなしで、紅茶の作法や歴史の話まで繰り出し、同席していたお客様に語りまくっていた。私がいれた紅茶で予想外とはいえ喜びを与えられた事に私も不思議と愉快になり、そのひと時がとても楽しい気分にさせられた。
 紅茶の茶柱は本当にめずらしい事で、通常カップに茶葉が入らないようティーストレナーという道具が利用されていて、茶殻よけになっている。また芯(葉のよりの強いもの)や茎が入っているものは、当店の紅茶ではめずらしく、本当に奇跡に等しい出来事なのである。日本ではティーカップに茶葉が入る事はマナー的にあまりよく思われていない節がある。紅茶の楽しみの1つは紅茶の水色(すいしょく)を楽しむ事、茶葉が入ってしまうとそのイメージが損なわれるという感覚。もう1つは、カップに口をつけた後、茶殻がくっつき飲みにくいという事が挙げられている。しかし紅茶の先進国イギリスには「紅茶占い」というものがあって、わざと茶漉しを使わず、カップの底に沈んだ茶殻の模様で占いをするという文献を読んだことがある。日本でも茶柱が立って落ち込む人はいないだろう。冗談ではなく、ティーサロンで喜ぶお客様を見て、私の持っているティーメイクの技術を駆使し【茶柱紅茶メニュー】を作ろうと真剣に考えてしまった。(笑)
 ふと自分が今年引いたおみくじの一語『旅行―控えなさい』を思い出した。
『旅行??????』違う!違う!ひらめいた。
 イギリス行きは「旅行」ではなく、「出張」だった!!!!!!
 結局は私の気の持ちようなのですネ!(喜)
紅茶専門店ハーヴェスト  松川


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